シブヤVSヨコハマ バトル曲「Reason to FIGHT」についての一解釈

はじめに

 この記事を書いている筆者は、激烈MTC推しの人間です。以下の文章はバトル曲のリリックについて自分なりの気づきや解釈をまとめたものであり、自分が言及したい部分に焦点を当てています。また、ラップについては素人です。以上の点をご了承ください。

 

楽曲紹介

Reason to FIGHT 作詞:ALI-KICK 作詞・編曲:TeddyLoid 

(全員)連れてくぜ to the NEXT LEVEL そのために負けるわけにはいかないBATTLE
握るMIC はなさないこのメンツ このチームでつかむ未来
(MTC)丸ごといただくMAD TRIGGER CREW (FP)絶対譲れないのさ Fling Posse(全員)悪いが引く気はない There's a Reason to FIGHT!

 

(理)転がしてやろうダイス 2つの目が飛び出る前に帰るが良い
back to square one 小官が銃だとするならば貴殿はエアガン
先には立たない後悔 貴殿に食わす食材はもうない
引き際を見極めろギャンブラー 長期休暇中だチャンスは
(帝)一飯の恩はマジサンキューな! だが関係ねえだろうラップには
この曲じゃあんたはフリテン BBライムで撃ち抜く眉間
俺+最強のグッドフェローズ オッズなら当然の10:0
どっちにベットするかなんて明白 今回はないぜ確変は!
(銃)嘘か誠か夢か現か どっちでもいい 邪魔すればしょっぴく
超ILLなPOLICEがLead M.T.C to 完全勝利
ないですよ番狂わせ シブヤ落とす韻踏むだけ
今日の「夢」はきっとナイトメア お布団かぶって泣いとけや
(幻)小生は悪夢すらも美味しくいただく獏 ついでにウサギも煮込んでパクパク
隠し味は少々捻ったライム 深き世界へダイブ
沈めてやる 結末は小生が書く あなたの負けだけは変え難く
我が言霊が襲い掛かる 終わりの鐘がなる

 

(全員)連れてくぜ to the NEXT LEVEL そのために負けるわけにはいかないBATTLE
握るMIC はなさないこのメンツ このチームでつかむ未来
(MTC)丸ごといただくMAD TRIGGER CREW (FP)絶対譲れないのさ Fling Posse
(全員)悪いが引く気はない There's a Reason to FIGHT!

 

(左)いつかのDawgが中王のDog 成り下がったか?あいつらの道具
理由があろうが関係ねえ てめぇだけはぜってぇ許せねぇ
ドアタマに1発だ それか3人まとめて八つに裂くか
二度と俺様の前に立つな ボケカスが
(乱)もう怖い顔しちゃって何その態度 プリプリしてるね毎度毎度
取られたくなきゃ守んないと 隙を見せりゃ全部奪い取る
警官も軍人もヤッちゃうぞ なんでも染めちゃうシブヤのサウンド
LOUDに鳴らすんだから どいとけよバカは
(理)決して染まらない海より深いNavy 焼き付けろその目に
(銃)我々は一枚岩 さてシブヤ退治だ
(理)覚悟の強度が違うのだよ (銃)解ったらマイク置けよドアホ
(帝)はあ?覚悟ならばカチカチで フィーバーフィーバーでアチアチ
(幻)比べるのが間違い 岩すらも穿ちかち割る
(帝)絆の強さが違うんだよ (幻)解らずとも幕を閉じていただこう

 

(全員)連れてくぜ to the NEXT LEVEL そのために負けるわけにはいかないBATTLE
握るMIC はなさないこのメンツ このチームでつかむ未来
(MTC)丸ごといただくMAD TRIGGER CREW (FP)絶対譲れないのさ Fling Posse(全員)悪いが引く気はない There's a Reason to FIGHT!

 

(左)ハマじゃ1と1と1を足すと3じゃない
(理)半端ない (銃)相乗効果起こし (左)跳ね上がる 跳ね上がる
(左)ナメたヤツはねじ伏せる そこどこや俺たちが通る (銃)また力磨く
(MTC)we are MAD TRIGGER CREW
(FP)シブヤの3は3つにゃ割れない 3こそが1 1人じゃないんだ
(帝)あいつのために (幻)あなたのために (乱)跳ね上がる 跳ね上がる
(乱)どんな壁も乗り越え 高め合う3つの個性
(FP)最強で最高 we are Fling Posse
(理)これがさだめか 共に歩く (左)折れないものがここにある
(銃)バラバラだった運命が (MTC)重なり1つの音になる
(銃・理)倒れるときは3人揃って前のめり (左)仲間だからな
(銃・理)だがまだやることが残ってる (左)聞いてんだろ?ぶっ潰す
(帝)何の因果か 共に歩く (幻)決して切れぬ絆がここにある
(乱)あきらめかけてた運命も (FP)支え合い1つの音になる
(幻)3本の矢 like 毛利元就 (帝)まとまり高め合う言葉に
(FP)耳傾けろっつってんだ! (乱)聴いてもらうよ!
(MTC)拳あげろ!MAD TRIGGER CREW (FP)飛び跳ねな!Fling Posse

 

(全員)連れてくぜ to the NEXT LEVEL そのために負けるわけにはいかないBATTLE
握るMIC はなさないこのメンツ このチームでつかむ未来
(MTC)丸ごといただくMAD TRIGGER CREW (FP)絶対譲れないのさ Fling Posse
(全員)悪いが引く気はない There's a Reason to FIGHT! 

 

銃兎の「退治」という文言について

 銃兎のリリックの中に「我々は一枚岩 さてシブヤ退治だ」という部分があります。RtFをはじめて聴いたときから、この「退治」という文言が私はどうにも引っかかりました。デジタル大辞泉によると、退治とは「1  悪いものや害を及ぼすものをうち滅ぼすこと。「ネズミを—する」「鬼—」」、「2 仏語煩悩(ぼんのう)や怠惰な心を断つこと。」となっています。

 退治という単語を人間が人間に対して使うことには、違和感があります。例でも出ている鬼退治など、退治という言葉には昔話を連想させられます。

 ここで、銃兎がなんらかの昔話になぞらえてラップをしている可能性が浮上します。

 では、一体その昔話とはなんでしょうか。銃兎のパートだけではヒントが少ないため、シブヤからのアンサーにも注目してみたいと思います。

 銃兎と理鶯のラップを受けて、帝統が「覚悟ならばカチカチで フィーバーフィーバーならばアチアチ」と返しています。なんだかこのリリックも気になりませんか? カチカチでアチアチ……どこかでこういう昔話を聞いたことがないでしょうか? そう、「かちかち山」です!かちかち山は、悪いタヌキをウサギが懲らしめて退治するお話です。懲らしめる一環として、火打ち石を「カチカチ」打ってタヌキの背負うしばに火をつける場面があります。火をつけられたタヌキは熱い熱いと苦しみます。

 つまり、「退治」とは、自身の名前とMCネームにウサギを冠する銃兎が発するからこそ効果のあるリリックだったわけです。このリリックは左馬刻でも理鶯でもなく、銃兎だから意味が生まれます。

 銃兎のウサギ属性は言うまでもないことですが、シブヤにはタヌキを冠する名前のメンバーはいません。そもそもシブヤにタヌキ属性はないのでは、と思われる方もいるでしょう。しかし、乱数が幻覚スキルを持っていることや、幻太郎の名前に「幻」が入っていること、幻太郎が嘘を弄するところは、人を化かすといわれるタヌキに見立てるにはピッタリだと私は思います。また、メタ的視点になるためこれは余談ですが、幻太郎はサンリオコラボの際にぽこぽん日記というタヌキのキャラクターとコラボしています。この点でもシブヤ(幻太郎)にタヌキ属性ありと見なせます。ちなみに、あらかじめ断っておきますが、私自身はシブヤを「悪い」タヌキだと思っているわけではありません。

 帝統はかちかち山に関連する「カチカチ」、「アチアチ」という単語を自ら口にして銃兎の意図に気づいたことを示しています。しかし、カチカチでアチアチなのは覚悟だと返すことで、銃兎の思惑どおりにタヌキとして退治されることをよしとせず、「覚悟の強度が違うのだよ」という理鶯のリリックにも同時にアンサーしています。さすがです。頭の回転が相当速くないと、咄嗟にこの返しはできないだろうと思わされます。

 幻太郎の「解らずとも幕を閉じていただこう」というリリックは、おそらく銃兎の「解ったらマイク置けよドアホ」に対するアンサーになっています。ここで、幻太郎が「幕を閉じる」という表現をしたことに着目します。再び辞書の出番です。デジタル大辞泉によると、幕を閉じるとは「芝居などを終えて、をしめる。転じて、物事が終わる。また、物事を終える。幕を下ろす幕を引く。「長年の内戦がようやく―・じた」」となっています。つまり、ここで幻太郎は、昔話になぞらえた退治劇はもう終わりですよと言っていると読み取れます。

 さて、ここをご覧になっている方は、銃兎がなぞらえているかちかち山の結末をご存じでしょうか。タヌキを釣りに誘ったウサギは、自分は木の舟に乗る一方でタヌキには茶色い舟を勧めます。タヌキの乗った茶色い舟は実は泥でできていて、やがて舟は水に溶け、タヌキは海に沈んでしまいます。タヌキに見立てられているシブヤも、どこかで舟に乗っていなかったでしょうか。そう、「Stella」です。Stellaの中でシブヤの三人は宇宙船に乗っていました。その背景を踏まえて、銃兎はシブヤの乗っている舟は泥舟だと言っているのではないでしょうか。そして、泥舟が沈むとするなら、それはきっとヨコハマの海です。この部分については、リリックの中に明確な根拠がないため、もしかすると論理が飛躍しているかもしれません。ただ、この点まで考えて銃兎がかちかち山を持ち出したのであれば、すごく面白いなと思います。

 

左馬刻の「八つに裂く」という文言について

 銃兎がウサギにまつわるラップをしたように、左馬刻や理鶯もウマやトリ(ウグイス)にまつわるラップをしている可能性があります。RtFの歌詞についてひとつひとつ検討していると、ウマについてはここが該当箇所かもしれない、と考えられる部分がありました。

 左馬刻のラップの中に「それか3人まとめて八つに裂くか」というリリックがあります。この「八つに裂く」とは要するに「八つ裂きにする」ということですが、そもそも八つ裂きとはなんなのかについて触れておきます。以下はWikipediaからの引用です。「八つ裂きの刑(やつざきのけい)とは世界各地で行われていた死刑の執行方法の一種[1]。被処刑者の四肢を牛や馬などの動力源に結びつけ、それらを異なる方向に前進させることで肉体を引き裂き、死に至らしめるものである。古代ギリシャでは、「ディアスフェンドネーゼ」(松の木折り)といい、たわめて固定した2本の木の間に罪人を逆さ吊りに縛りつけ、木が元に戻ろうとする力で股を裂く方法も用いられた[1]。最も重い死刑の形態であり、酷刑として知られる。恐怖の馬走としても知られる。」。ずたずたに裂くことを八つ裂きといいますが、八つ裂きの語源は上記のとおりです。私自身は十二国記からの刷り込みで八つ裂き刑といえば牛に引かせるものだという印象でしたが、馬に引かせる方法もあるようです。由来を踏まえると、八つ裂きという単語を使った左馬刻の激しい怒りと苛烈さを感じずにはいられません。

 トリやウグイスについては銃兎のような物語による使用と左馬刻のような熟語による使用を念頭に置いて検討しましたが、見つかりませんでした。私が見落としている可能性もありますし、八つ裂きと聞いてウマを連想する人は少ないと思いますのでそもそも名前にまつわるリリックは銃兎だけだった可能性もあります。理鶯についてはこの部分じゃないか?とお気づきの方は教えていただけると嬉しいです。

 

最後に

 RtFはバトル曲です。バトル曲については、キャラクターがその場でMCバトルを繰り広げているものとして私は聴いています。今回言及したのは限られた部分のみですが、相手の即興のラップに対してまた即興であれだけのアンサーを返すのは大変なことです。閃きや語彙や教養、とにかくいろんなものが必要でしょう。今回シブヤには痛いところを突かれまくりましたが、同じぐらいヨコハマも相手の痛いところを突けたと思っています。ハマの闘志、折れない姿が大好きです!!!